【ミライデンタルクリニック監修】
上の前歯が、下の前歯を深く覆ってしまう状態を「過蓋咬合(かがいこうごう)」といいます。
「見た目の問題だけでは?」と思われがちですが、放置することで顎関節症や歯のすり減り、頭痛、発音の不調など、さまざまなトラブルにつながることもあります。
「どこに相談すればいいの?」「矯正って痛そうだし費用も気になる」
そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、過蓋咬合の原因・症状・治療法に加え、矯正の流れや保険の適用条件までを歯科医の視点からわかりやすく解説します。
大人も子どもも、「もっと早く治しておけばよかった」と後悔しないために、まずは自分の歯並びと噛み合わせをチェックしてみましょう。
過蓋咬合とは?

過蓋咬合(かがいこうごう)とは、上の前歯が下の前歯を深く覆いすぎてしまっている噛み合わせの状態のことです。歯科用語では「ディープバイト」とも呼ばれます。
一見すると歯並びはきれいに見える場合もありますが、実は顎関節や歯への負担が大きく、放置すると将来的にトラブルを招くリスクが高いとされています。
まずは、正常な噛み合わせと何が違うのかを見てみましょう。
正常な噛み合わせとの違い

健康的な噛み合わせでは、上の前歯が下の前歯に2〜3mmほど重なっている状態が理想です。この重なり具合によって、上下の歯のバランスが保たれ、しっかりと食べ物を噛んだり、発音したりできます。
一方、過蓋咬合では上の前歯が下の前歯を過剰に覆ってしまい、下の前歯がほとんど見えない状態になります。下の前歯が3分の2ほど重なっている人は過蓋咬合の疑いがありです。
もし過蓋咬合の場合以下のような影響が出てくることがあります。
- 顎の動きが制限される
- 下の歯が上顎の歯ぐきに当たって痛みが出る
- 奥歯に過剰な負担がかかる
- 滑舌が悪くなる
- 顔の下半分が短く見える(「面長」「顔が伸びる」と感じることも)
このように、見た目以上に体全体にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があるため、早期の発見と適切な対処が大切です。
過蓋咬合の主な原因

過蓋咬合(かがいこうごう)は、上の前歯が下の前歯を深く覆ってしまう噛み合わせの異常です。
その原因は一つではなく、骨格的な要因から生活習慣による影響、歯の状態までさまざまです
過蓋咬合の主な原因について解説します。
遺伝や骨格による影響
過蓋咬合は、生まれつきの骨格や歯並びの特徴が関係していることがあります。
たとえば以下のような骨格のズレがあると、上下の前歯の噛み合わせが深くなり、過蓋咬合が起こりやすくなります。
- 上顎が大きく成長しやすい
- 下顎が小さく、後方に位置している
- 顎の成長バランスが悪い
これらの骨格的な特徴は遺伝の影響も大きく、両親のどちらかが過蓋咬合であった場合、子どもも似たような噛み合わせになる可能性があります。
骨格が原因の場合は、成長に合わせた早期の対策が重要です。
特に小児期であれば、顎の成長を誘導する矯正治療で改善を目指すことができます。
歯並びや虫歯も原因の1つ
歯の状態が原因となって過蓋咬合が発生するケースもあります。
たとえば、以下のような状態では、噛み合わせが深くなりやすくなります。
- 奥歯がすり減って高さが低くなっている
- 前歯が長く伸びてしまっている
- 虫歯によって歯が欠けたり、抜けたりしている
歯の欠損や咬耗(歯のすり減り)によって噛み合わせが乱れ、徐々に過蓋咬合が進行してしまうことも。
また、噛み合わせのズレが虫歯や歯周病のリスクを高めるため、症状の悪化を招く悪循環にもなりかねません。
このように、歯並びの乱れや虫歯も過蓋咬合を引き起こす要因となるため、定期的な歯科検診と正しい歯のケアが重要です。
間違われやすい癖との関係
成長期の習慣や癖は、歯並びや噛み合わせの発達に影響を与えることがあります。
ただし、過蓋咬合は主に骨格や遺伝的要因によるものとされ、指しゃぶりや頬杖などが直接的な原因となることは基本的にありません。
例えば、指しゃぶりは前歯を押し出す力が加わるため、「開咬(かいこう)」を引き起こし、過蓋咬合とは逆の症状につながることもあります。
また、頬杖や片側だけで噛む癖は、顎の左右非対称や歯列のゆがみに関与する場合はあるものの、過蓋咬合特有の「垂直的な噛み合わせの深さ」には直接つながらないと考えられています。
過蓋咬合の症状とリスク

過蓋咬合(かがいこうごう)は、見た目の問題だけではなく、歯や顎、全身にまで悪影響を及ぼす可能性があります。
自覚症状が少ない場合でも、じわじわと不調を引き起こすことがあるため注意が必要です。
ここでは、過蓋咬合によって起こる主な症状とリスクを解説します。
歯や歯茎への負担
過蓋咬合では、上の前歯が深く下の前歯を覆っているため、歯同士が強く接触しやすくなります。
この状態が続くと、次のような影響が出る可能性があります。
- 歯のすり減り(咬耗)
-
歯と歯が常に強く当たることで、表面のエナメル質が削れ、知覚過敏を引き起こすことがあります。
- 歯の欠けやヒビ
-
咬む力が一点に集中しやすく、歯に細かなヒビが入ったり、割れてしまうこともあります。
- 歯茎へのダメージ
-
上下の前歯の強い接触により、歯茎が傷つく、退縮する(下がる)などの問題が起こることがあります。
- 歯根への負担
-
強い力が継続的にかかることで、歯を支える歯根が吸収されるリスクも指摘されています。
これらのダメージは徐々に進行するため、「気づいたときには歯がもろくなっていた」というケースも少なくありません。
そのため、過蓋咬合がある場合は、見た目だけでなく歯や歯茎の健康を守るためにも、早めの対策が大切です。
顎関節症のリスクを高める可能性
過蓋咬合は、顎関節への負担を増加させる噛み合わせの異常です。
上の前歯が下の前歯を深く覆うことで、下あごの動きが制限され、顎関節に余計な負担がかかります。
その結果、顎関節症を引き起こしやすくなり、以下のような症状が現れることがあります。
- 口を開けづらい
- 顎がカクカク鳴る
- 顎に痛みが生じる
このような症状は日常生活に支障をきたすこともあるため、早期に治療を開始することが重要です。
過蓋咬合の治療には矯正治療が主に使用され、適切な治療によって顎関節症の予防や症状の改善が期待できます。
放置するとどうなるの?
過蓋咬合を放置すると、見た目の問題だけでなく、さまざまな健康リスクにつながるおそれがあります。
- 歯の摩耗
-
上下の前歯が強く当たることで歯の摩耗(すり減り)が進み、やがて知覚過敏や歯の破折などのトラブルを引き起こす可能性があります。歯が短くなってしまうことで見た目にも影響が出る場合もあるでしょう。
- 奥歯への負担
-
深い噛み合わせは奥歯に大きな負担をかけ続けるため、将来的に歯の寿命が短くなる原因にもなります。
- 顎関節症や全身の不調
-
かみ合わせのバランスが崩れることで、顎関節症や肩こり、頭痛など、全身の不調につながるケースもあるのです。
子どもに関しては、顔の成長や発音にも影響があります。大人は、加齢と共に見た目の悩みが悪化する恐れも。
早期に治療を受けることで、これらのリスクを防ぐことができます。
過蓋咬合の治療法

過蓋咬合(かがいこうごう)は、矯正治療で改善できる不正咬合の一つです。
状態によっては、ワイヤー矯正やマウスピース矯正のほか、抜歯や外科手術を必要とすることもあります。
ここでは、主な治療法とその特徴、治療期間や費用の目安をわかりやすく解説します。
ワイヤー矯正とブラケット

ワイヤー矯正は、歯の表面または裏側にブラケット(固定装置)を取り付け、ワイヤーで歯を動かす治療法です。
特に過蓋咬合のように「歯を圧下(おさえ込む)する」動きが必要なケースでは、ワイヤー矯正の力が必要になることがあります。
- メリット:あらゆる症例に対応でき、確実に歯を動かせる
- デメリット:装置が目立ちやすく、口内トラブル(口内炎など)になりやすい
裏側矯正(リンガル矯正)を選べば、見た目の目立ちにくさも両立できますが、費用がやや高めです。
マウスピース矯正(インビザラインなど)

透明なマウスピースを装着して、段階的に歯を動かしていく矯正方法です。
軽度〜中等度の過蓋咬合であれば、インビザラインなどのマウスピース矯正で対応可能なケースもあります。
- メリット:目立ちにくく、取り外しができて清潔に保ちやすい
- デメリット:適応症例が限られ、自己管理が必要(1日20時間以上の装着が必要)
重度の過蓋咬合や、奥歯の圧下が必要なケースでは、他の矯正方法を検討したほうがよいでしょう。
抜歯・外科矯正

骨格的な問題がある場合や、重度の過蓋咬合では、抜歯や外科的処置を伴うことがあります。
- 抜歯矯正
歯を並べるスペースを確保するために、上下いずれかの歯を抜歯する治療。特に前歯の突出を伴う場合に選択されます。 - 外科矯正(外科的矯正手術)
顎の骨格が大きくズレている場合は、顎の骨を手術で調整し、かみ合わせを整えます。
いずれも専門的な診断と連携体制が必要となるため、信頼できる矯正歯科で相談しましょう。
治療期間と費用の目安
過蓋咬合の治療にかかる期間や費用は、選ぶ治療法と症状の程度によって大きく異なります。
以下は一般的な目安です。
治療法 | 治療期間の目安 | 費用の目安(自由診療の場合) |
---|---|---|
ワイヤー矯正(表側) | 約2〜3年 | 約80〜100万円 |
裏側ワイヤー矯正(リンガル) | 約2〜3年 | 約100〜120万円 |
マウスピース矯正(インビザライン) | 約1.5〜2.5年 | 約80〜100万円 |
小児矯正(第1期治療) | 約1〜2年 | 約40〜60万円 |
外科矯正(保険適用) | 約半年〜1年+手術 | 約20〜40万円(保険適用3割負担の場合) |
※矯正の難易度や医院の方針により金額は異なります。事前のカウンセリングで詳細を確認しましょう。
自由診療のため、費用は高額になることもあります。治療費の支払いにはデンタルローンや分割払いに対応しているクリニックもあるので問い合わせてみましょう。
保険適用となるのは、「外科手術が必要な重度の過蓋咬合」などの限られたケースです。
ミライデンタルクリニックでは、裏側ワイヤー矯正やインビザラインを中心に、患者さまの症状やご希望に合わせたオーダーメイド治療を提供しています。
治療費は明確な料金体系でご提示し、無料カウンセリングで費用や期間についてもしっかりご説明いたします。
「他院と比較したい」「まずは相談だけしたい」という方も、お気軽にLINEからご予約ください。
子どもの過蓋咬合はいつから治療を始める?

子供の過蓋咬合は、将来的な顎や歯のトラブルを防ぐためにも早期発見・早期治療が重要です。
ただし、子どもの成長段階や歯の生え変わり時期によって適切な開始時期は異なるため、個別に診断を受ける必要があります。
ここでは、小児矯正の開始タイミングや、日常で気をつけたい癖・習慣、子供でも安心して使える矯正装置について紹介します。
小児矯正の開始タイミング
一般的に、過蓋咬合の治療は6〜9歳ごろ(混合歯列期)に始めるのが理想的とされています。
この時期はまだ顎の骨の成長をコントロールしやすく、永久歯が生えそろう前に噛み合わせを改善することで、将来の大掛かりな矯正を避けられる可能性もあります。
とくに以下のようなサインが見られる場合は、早めの受診がおすすめです。
- 笑ったときに下の前歯が見えない
- 上の前歯が内側に深くかぶさっている
- 指しゃぶりや頬づえの癖がある
- いつも口が開いている(口呼吸)
また、生活習慣の見直しも大切です。たとえば、よく噛んで食べることや、定期的な歯科検診で噛み合わせや顎の成長をチェックしてもらうことが予防に繋がります。
子どもの成長とともに改善するケースもありますが、気になる場合はまず歯科医院で早期チェックを受けておくと安心です。
子供に優しい治療装置
子どもの過蓋咬合の治療では、「成長をサポートしながら噛み合わせを整える」ことがポイントです。
無理なく治療を続けられるよう、子供に優しい装置が使われています。
マウスピースをはじめ、バイオネータや、拡大床を使った治療法などがあります。
お子さまの年齢・成長スピード・性格・生活スタイルに合わせて、最適な装置を選ぶことが大切です。
「装置が怖い」「長くつけていられるか不安」という場合も、矯正歯科で相談すれば、やさしく丁寧にサポートしてもらえますよ。
大人の過蓋咬合治療方法は?

「今さら矯正なんて…」「仕事に支障が出そう…」と思っている方も多いかもしれません。
しかし、大人になってからでも過蓋咬合の治療は可能です。
近年では、見た目に配慮した矯正方法や短期間で完了する治療も選べるようになっています。
ここでは、大人の過蓋咬合治療について詳しく見ていきましょう。
大人でも矯正はできる?
大人でも矯正治療は十分可能です。
歯や骨の成長は止まっていますが、歯を動かすメカニズムは子どもと同じです。
ただし、大人の場合は以下の点に注意が必要です。
- 歯周病や虫歯があると、先に治療が必要
- 骨の柔軟性が低いため、歯の動きに時間がかかることも
- 顎の骨格が原因の場合は外科的な対応が必要なこともある
大人になってからでも、理想的な噛み合わせと見た目の改善を目指すことができます。
まずは矯正歯科で精密検査を受け、あなたに合った方法を確認しましょう。
ミライデンタルクリニックでは、歯並びにお悩みのみなさま一人ひとりに合った治療をご提案しています。
無料カウンセリングもLINEから受付中。気になる方は、まずはお気軽にご相談ください!
大人の過蓋咬合におすすめの矯正方法

「矯正は見た目が気になる」という方には、以下のような目立ちにくい治療法があります。
矯正方法 | 特徴 |
---|---|
インビザライン(マウスピース矯正) | 透明で目立ちにくく、取り外しが可能。口腔内の清掃がしやすい。 |
ホワイトワイヤー矯正(表側) | 白や透明のワイヤー・ブラケットを使用。通常の矯正より目立たない。 |
裏側矯正(リンガル矯正) | 歯の裏側に矯正装置を装着。完全に見えないが、費用と技術が高め。 |
治療期間や費用は装置によって異なりますが、目立たず仕事や日常生活への支障が少ないため、働く世代の方に人気です。
治療後の保定(リテーナー)と後戻り対策
過蓋咬合は「治療したら終わり」ではなく、その後の保定(リテーナー)がとても大切です。
リテーナーとは歯が元の位置に戻らないように保つ装置。取り外し式と固定式があります。
装着期間の目安は、最低でも1〜2年、場合によっては数年単位での装着が必要です。
後戻りを防ぐために大切なことは以下の3つ。
- 歯科医師の指示を守ってリテーナーを使用する
- 定期的に歯科でチェックを受ける
- 舌癖や噛み癖がある場合は、併せて改善を図る
しっかりと保定を続けることで、きれいな歯並びを長く維持できます。
まとめ:過蓋咬合を改善して思いっきり笑おう!

過蓋咬合は、見た目の印象だけでなく、顎関節や歯への負担、虫歯・歯周病のリスクにもつながる不正咬合です。
早期に気づき、適切なタイミングで治療を始めれば、将来的なトラブルを予防することもできます。
「なんとなく噛み合わせが気になる」「人前で笑うのが恥ずかしい」と感じている方も、まずは自分の状態を知ることから始めましょう。