【ミライデンタル歯科医院監修】八重歯はチャームポイントと言われる一方で、矯正すべきかどうか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
じつは八重歯は見た目の印象だけでなく、歯並びの乱れは虫歯や歯周病、かみ合わせの不調といったトラブルにつながることもあります。
本記事では、八重歯ができる原因やそのままにしておくリスク、矯正治療の選択肢(ワイヤー矯正・マウスピース矯正)について、歯科の視点からやさしく丁寧に解説します。
「抜歯は必要?」「費用はどのくらい?」「子どもの八重歯も矯正すべき?」
そんな疑問にもお答えしています。八重歯でお悩みの方が、安心して一歩を踏み出せるように、ぜひ最後までご覧ください。
「八重歯」とは?特徴とできる原因を知ろう

八重歯(やえば)は、笑ったときに上の歯ぐきのあたりからキュッと飛び出すように見える歯のことで、「かわいい」と言われることもある特徴的な歯並びです。
ただし、歯科的には「不正咬合(ふせいこうごう)」の一種とされています。見た目の印象だけでなく、健康面でも影響が出ることがあるため、正しく理解しておくことが大切です。
ここでは、八重歯がどの歯のことなのか、どうしてできるのか、そして似ているようで違う「叢生(そうせい)」との関係についてもやさしく解説していきます。
八重歯はどこの歯?犬歯との関係
八重歯とは、本来の位置からずれて、外側や上のほうに飛び出して生えた犬歯(けんし)のことを指します。
犬歯は、前歯から数えて3番目にある尖った歯で、かみ切る役割を担う重要な歯です。笑ったときに目立つ位置にあるため、八重歯があると印象に残りやすくなります。
日本では「かわいい」「チャームポイント」と見なされることもありますが、海外では歯列不正(不正咬合)とされ、治療をすすめられることが一般的です。
つまり、犬歯は本来正常な歯であり、八重歯はその犬歯がずれて生えることで生じる見た目の状態です。
なぜ八重歯になるのか(顎の大きさ・歯の本数・遺伝)
八重歯になる主な原因は、歯が並ぶスペースが足りないことです。
特に上あごが小さい方や、歯の本数が多い(過剰歯)場合などは、犬歯が生える場所が足りなくなり、外側や上の方からズレて生えてしまうことがあります。
また、歯の大きさや数、あごの形などは遺伝の影響も大きいとされています。
お父さんやお母さんに八重歯がある場合、お子さんにも同じような歯並びになることがあります。
「うちの子、歯がちょっと混み合ってきたかも?」と感じたら、早めに歯科で相談してみると安心です。
八重歯と叢生(ガタガタの歯並び)の違い


- 八重歯
犬歯が本来の位置からずれて、外側や上の方から生えてきた状態のこと - 叢生(そうせい)
歯が重なり合ってガタガタに並んでいる状態(歯並びの乱れ全般)
八重歯は、この叢生の中でも特に犬歯がずれて目立っているケースに使われる言葉です。
ちなみに、叢生は「乱ぐい歯(らんぐいば)」とも呼ばれており、歯科医院では一般的な用語です。
叢生の状態では、歯磨きがしにくくなるため、虫歯や歯周病のリスクも高くなります。見た目の問題だけでなく、健康面にも注意が必要です。
八重歯か叢生かの正確な判断は、見た目だけでは難しい場合もあるため、気になる方は歯科医院でチェックしてもらいましょう。
八重歯をそのままにするとどうなる?デメリットとリスク

八重歯は、個性的で「かわいい」と感じる方もいますが、放置することでさまざまなデメリットが生じる可能性があります。
見た目だけの問題と思われがちですが、実はお口の健康や身体のバランスにも影響を与えることがあるため、注意が必要です。
ここでは、八重歯をそのままにした場合に考えられる主なリスクについてご紹介します。
見た目のコンプレックスになる可能性
八重歯が目立つと、「口元に自信が持てない」と感じる方も少なくありません。
とくに人前で話す機会が多い方や写真に写る場面が多い方にとっては、歯並びが気になって笑顔をためらってしまうこともあります。
「若いころはチャームポイントと思っていたけど、大人になるにつれて気になってきた」
という声もあり、年齢とともに印象が変わることも八重歯の特徴のひとつです。
虫歯・歯周病になりやすい理由
八重歯のように歯が重なっている部分は、歯ブラシの毛先が届きにくく、汚れがたまりやすい場所です。
磨き残しが続くと、虫歯や歯周病の原因菌が繁殖しやすくなり、お口の中の健康を脅かしてしまうこともあります。
また、食べ物が詰まりやすかったり、フロスが通しにくかったりすることもあり、セルフケアが難しくなるのも問題です。
見た目だけでなく、「お口の清潔を保ちにくい」という点が、八重歯の大きなリスクのひとつです。
噛み合わせや顎関節への影響
歯並びが乱れていると、上下の歯が正しく噛み合わない「不正咬合(ふせいこうごう)」になってしまうことがあります。
八重歯があると、前歯や奥歯のバランスが崩れやすく、特定の歯にだけ負担がかかってしまうことも。
こうしたアンバランスな噛み合わせは、顎関節(がくかんせつ)への負担となり、顎が痛くなったり、口が開きづらくなったりする「顎関節症」を引き起こすこともあります。
また、噛み方のクセが全身の姿勢や肩こりにまで影響するケースもあるため、噛み合わせの乱れは身体全体に関わる重要な要素といえるでしょう。
八重歯は治すべき?矯正するかどうかの判断ポイント

「八重歯は必ず治した方がいいの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
実際、八重歯はチャームポイントと捉えられることもあれば、健康リスクの原因として矯正がすすめられることもあります。
ここでは、治療を検討した方がよい場合と、残す選択肢についての考え方、さらに年齢による影響についてもご紹介します。
こんな場合は八重歯の治療を考えよう
次のような症状やお悩みがある場合は、八重歯の矯正治療を検討するタイミングかもしれません。
- 歯磨きがしにくく、虫歯や歯周病が心配
- 食べものが噛みにくい、発音しづらいと感じる
- 顎が疲れる、痛むなど、顎関節に不調がある
- 見た目が気になって、笑顔に自信が持てない
これらは、八重歯によって噛み合わせや歯並びが崩れているサインかもしれません。
放っておくとお口全体の健康に影響することもあるため、気になる方は一度歯科医院で相談してみましょう。
八重歯をそのまま残すという選択肢も
一方で、八重歯があっても特に支障がない場合や、本人が気に入っている場合には、無理に治療する必要はありません。
日本では、八重歯が「かわいい」「個性的」として親しまれてきた文化もあり、チャームポイントとして残す人も少なくありません。
ただし、将来的に歯並びが変化したり、虫歯ができやすくなることも考えられます。
残す場合でも、定期的に歯科でチェックを受けて、清潔な状態を保つことが大切です。
実際に、芸能人やモデルの中にもあえて八重歯を矯正せずに活かしている方もいます。
子どもと大人、それぞれのタイミングと考え方
矯正のタイミングは、子どもと大人で考え方が少し異なります。
お子さまの場合、あごの成長がまだ進んでいるため、成長に合わせた矯正(第1期治療)ができるチャンスがあります。この時期に適切な対応をすれば、将来的に本格的な矯正が必要なくなることもあるのです。
一方、大人の矯正はあごの骨が固まっているため、歯を動かすのに時間がかかることもありますが、年齢に関係なく治療を受けることは可能です。
最近では、目立ちにくいマウスピース矯正(インビザライン)なども登場し、大人になってから矯正を始める方も増えています。
年齢にかかわらず、「気になるなら早めに相談してみる」ことが安心への第一歩です。
八重歯の矯正方法とそれぞれの特徴

「八重歯を治すなら、どんな方法があるの?」と疑問に思う方も多いはず。
歯列矯正とひとくちに言っても、ワイヤー矯正・マウスピース矯正・外科的な治療など、症状や希望に応じた方法が選ばれます。
ここでは、それぞれの特徴と向いているケースについてわかりやすくご紹介します。
ワイヤー矯正(ブラケット)のメリット・デメリット

ワイヤー矯正は、歯の表面に「ブラケット」と呼ばれる小さな装置を取りつけ、ワイヤーの力で歯を少しずつ動かしていく方法です。
矯正治療の中では最もポピュラーで、幅広い症例に対応できるのが特徴です。
メリット | デメリット |
---|---|
重度の八重歯や叢生にも対応しやすい 歯の細かい移動や調整がしやすい 多くの歯科医院で取り扱いがある | 装置が目立ちやすく、見た目が気になることも 食事や歯磨きの際に工夫が必要 金属アレルギーの方には注意が必要な場合も |
目立ちにくい白いブラケットや、歯の裏側に装置をつける裏側矯正(舌側矯正)を選べる場合もあります。
マウスピース矯正(インビザライン)は八重歯に対応できる?

透明なマウスピース型の矯正装置(※代表例:インビザライン)は、近年人気の高い治療方法です。
見た目に目立ちにくく、取り外しもできるため、日常生活へのストレスが少ないのが魅力です。
ただし、マウスピース矯正は症例によっては適応できない場合もあるため、歯科医師による診断が必要です。
八重歯の程度が軽ければマウスピース矯正で対応可能ですが、歯の重なりが大きい場合やスペースが極端に不足している場合は、ワイヤー矯正が選ばれることもあります。
- 見た目が自然で、会話中も気づかれにくい
- 取り外しができて衛生的
- 毎日の装着時間(20時間以上)を守る必要がある
「できるだけ目立たずに治したい」という方には、とても人気のある選択肢です。
外科矯正や抜歯が必要なケースもある?

重度の八重歯や、あごの骨格に問題がある場合には、ワイヤー矯正やマウスピース矯正だけでは対応しきれないことがあります。
たとえば、歯が並ぶスペースが極端に足りない場合には、抜歯によってスペースを確保してから矯正を行うことがあります。
また、上下のあごのズレが大きい場合には、外科手術と矯正を組み合わせた「外科矯正」が必要になるケースも。
もちろん、すべての人が抜歯や手術をするわけではありません。
気になる方は、まず精密検査を受けて、医師と相談しながら進めると安心です。
大切なのは、現在の歯やあごの状態に合わせて、最適な治療計画を立てることです。
八重歯の歯列矯正にかかる費用・期間・痛みの目安

八重歯の矯正を検討する際に、多くの方が気になるのが「費用はいくら?」「どれくらいの期間がかかる?」「痛みはあるの?」という点です。
ここでは、一般的な矯正治療の費用相場や期間、痛みの程度について、八重歯に特化してご紹介します。
八重歯矯正にかかる費用相場(保険適用の有無)
矯正治療は基本的に自由診療(自費診療)となるため、保険は適用されないケースがほとんどです。
◾️一般的な費用相場
治療法 | 費用相場 | 特徴 |
---|---|---|
全体矯正(ワイヤー) | 約70〜120万円 | ガタガタな歯並び全体を整える。表側・裏側で料金が異なる(裏側は高額) |
マウスピース矯正(インビザラインなど) | 約80〜100万円 | 透明で目立たず、取り外し可能。症例により対応不可な場合もある |
部分矯正(八重歯まわりのみ) | 約20〜50万円 | 軽度の八重歯や前歯のデコボコ向け。治療期間は半年〜1年程度 |
外科矯正(顎の骨格の問題がある場合) | 約100〜150万円(保険適用外) 約30万円前後(保険適用あり) | 骨格の問題がある場合に手術を併用 |
※症状の程度や装置の種類、医院によって金額に差があります。
※初診相談や検査代、保定装置(リテーナー)などが別途かかる場合もあります。
【ミライデンタルクリニックの料金例】
- ワイヤー矯正
-
- 表側ワイヤー矯正・全体:495,000円(モニター価格)
- 裏側ワイヤー矯正・前歯部:495,000円(モニター価格)
- 精密検査・診断費:0円
- 調整費:3,300円/月
- リテーナー:0円
- 抜歯(矯正に関連するもの):無料
- インビザライン矯正
-
- コンプリヘンシブ:660,000円
- モニター価格:550,000円
- 初回カウンセリング:無料
- 精密検査費:33,000円
- 調整費:5,500円
- アタッチメント除去:22,000円
- リテーナー:33,000円
- 抜歯(矯正に関連するもの):無料
保険が使えるケースは?
八重歯のみで保険が適用されることはまれですが、顎の変形や先天的な疾患がある場合など、医療的に必要と認められた場合には保険適用される可能性もあります。
- 見た目改善が目的の場合 → 保険適用外(自由診療)
- 顎変形症などで外科的治療が必要な場合 → 保険適用あり
- 特定の先天性疾患(口唇口蓋裂など)の治療 → 保険適用あり
詳細は、矯正歯科での診断を受けて確認しましょう。
治療期間はどれくらい?年齢で違いはある?
矯正治療の期間は、八重歯の重なり具合や治療方法、年齢などによって異なります。
- 軽度の八重歯(部分矯正):6か月〜1年
- 全体矯正(中〜重度):1.5年〜3年程度
- お子さま(成長期の矯正):2段階で3〜5年に及ぶことも
また、大人と子どもでは矯正にかかる期間や進み方が異なります。
子どものうちは顎の成長を活かした矯正が可能ですが、大人は骨の成長が止まっているため、計画的な歯の移動が必要で、やや時間がかかる傾向にあります。
痛みや生活への影響はどの程度?
矯正治療では、装置をつけた直後や、調整後の数日間に軽い痛みや違和感を感じることがあります。
特にワイヤー矯正では、「じんわり押されるような感覚」や「硬いものが噛みにくい」といった症状が出ることがあります。
ただし、この痛みは通常2〜3日がピークで、約1週間ほどで落ち着くことが多く、徐々に慣れていく方がほとんどです。
マウスピース矯正(インビザラインなど)は、装置が滑らかで柔らかく、比較的痛みが少ない治療方法として知られています。
また、治療中は以下のような生活面の変化があります。
- 食事のときに装置が気になる(固い・粘着性のあるものは避けると安心)
- 歯磨きがやや丁寧に必要(特にワイヤー装着中は工夫が必要)
- 会話や見た目が気になる。(目立たない装置も選べる)
こうした変化も、少しずつ慣れていく方がほとんどなので、過度に心配しすぎる必要はありません。
◾️強い痛みが続く場合は歯科医院へ
通常は1週間程度で慣れる範囲の痛みですが、強い痛みが続く、噛めないほどつらい、装置が当たって傷ができているなどの症状が続く場合は、無理せず早めに歯科医院に相談しましょう。
装置の調整や保護材の使用などで、負担を軽くできるケースも多くあります。
治療期間を快適に過ごすためにも、我慢せずに相談することが大切です。
子どもの八重歯は早めの対策がおすすめ

お子さまの歯が「少し重なってきたかも」「犬歯が変な場所から生えてきた……?」と気になり始めたら、できるだけ早い段階で対策することが大切です。
八重歯は、成長期のあごのバランスや生活習慣の影響を大きく受けやすいため、放っておくと歯並びがさらに乱れる可能性もあります。
ここでは、子どもの八重歯に関するチェックポイントや予防・対策についてご紹介します。
歯列矯正のベストタイミングはいつ?
子どもの矯正治療には、大きく分けて「第1期治療(6〜12歳)」と「第2期治療(中学生以降)」があります。
とくに第1期の時期はあごの成長を利用できる貴重なタイミングのため、将来の歯並びを整えるうえでとても重要です。
「まだ乳歯があるから早いのでは?」と思われがちですが、犬歯が生えるスペースがあるかどうか、永久歯が正しく並べる環境かなどを早めにチェックすることで、後の本格的な矯正を避けられることもあります。
目安としては、前歯の生え変わりが始まる6〜7歳ごろに一度、歯科医院でチェックしておくのがおすすめです。
乳歯が抜けた後のチェックポイント
乳歯が抜けたあと、永久歯が生えてくる位置やタイミングによって、将来の歯並びに影響が出ることがあります。
以下のような様子が見られた場合は、早めの相談が安心です。
- 永久歯が斜めに生えてきている
- 犬歯の生えるスペースがなさそう
- 歯の重なりが目立つ
- 乳歯がなかなか抜けず、永久歯が別の場所から生えてきている
特に犬歯は生えるのが遅めで、スペース不足が起こりやすい歯のひとつです。
正しい位置に生えてくるかを見守りつつ、必要に応じて歯科医師の判断を仰ぎましょう。
生活習慣(指しゃぶり・舌癖など)の見直しも大切
子どもの歯並びに影響を与える要因として、生活習慣やクセの影響も無視できません。
特に以下のような習慣には注意が必要です。
- 指しゃぶりが長期間続いている
- 舌で前歯を押すクセがある(舌癖)
- 口が開きっぱなしで、口呼吸が多い
- 頬杖や横向き寝のクセがある
これらの習慣は、あごの発達や歯の位置に少しずつ影響を与え、八重歯の原因になることもあります。
歯科医院では、こうしたクセに対してアドバイスを受けたり、必要に応じて訓練装置やマウスピースなどでサポートすることも可能です。
「まだ様子を見ても大丈夫かな?」と迷ったときこそ、専門的な視点でのチェックをおすすめします。
八重歯矯正でよくある質問(FAQ)

八重歯の矯正については、「抜歯が必要?」「何歳からできるの?」「痛みが不安……」など、たくさんの疑問や不安の声を耳にします。
ここでは、患者さまからよく寄せられる質問にお答えします。
まとめ:八重歯は「治す or 残す」ではなく、あなたに合った選択を
八重歯は、見た目の印象だけでなく、歯の健康や噛み合わせにも関わる大切なポイントです。
治療すべきか、チャームポイントとして残すかは、一人ひとりの感じ方やお口の状態によって答えが変わります。
「このままで大丈夫かな?」「将来のことを考えると少し不安かも……」
そんなふうに迷ったときこそ、自分にとってベストな選択肢を知るチャンスです。