「前歯が重なってガタガタしている」「磨きにくくて虫歯ができやすい」
そんなお悩みがある方は、叢生(そうせい)という歯並びの乱れかもしれません。
叢生とは、歯が不規則に生えたり、重なり合っている状態のこと。見た目の問題だけでなく、虫歯や歯周病のリスクが高まるなど、放置すると健康面にも影響を与えかねません。
この記事では、叢生の原因やデメリット、治療法(ワイヤー矯正やマウスピースなど)を歯科医がわかりやすく解説。費用や治療期間についても具体的にご紹介します。
「治療するべき?」「子どもの歯並びが心配」そんな方も、まずは正しい知識をもとに判断してみましょう。
叢生(そうせい)とはデコボコした歯並びのこと

叢生(そうせい)とは、歯と歯が重なり合ったり、ねじれて生えていたりして、歯並びがガタガタになっている状態のことを指します。
不正咬合(上下の歯の噛み合わせが悪いこと)の中の一つで、日本人に一番多い状態だといわれています。別名「乱杭歯(らんぐいば)」ともいわれます。
叢生は主に前歯にあらわれることが多く、歯のスペースが足りないことで生じます。
八重歯(ずれて生えた犬歯)も叢生の一種です。
このようなデコボコした歯並びは、見た目が気になるだけでなく、歯磨きがしにくいために虫歯や歯周病のリスクが高くなったり、発音・かみ合わせに影響を与えたりすることもあります。
「単なる見た目の問題」と思われがちですが、放置すると口の健康にさまざまなトラブルを引き起こすこともあるため、早めの対処が大切です。


叢生になる原因は?

叢生(そうせい)は、歯がきれいに並ぶためのスペースが足りないことによって起こります。
歯が生えるスペースが不足していると、行き場をなくした歯が前後にずれたり、重なり合ってしまうのです。
叢生になる原因は大きく分けて5つあります。
- あごが小さい
現代人はあごが小さくなる傾向があり、歯が並ぶスペースが不足しやすくなっています。 - 歯(永久歯)のサイズが大きい
歯が大きい場合、同じあごの中におさまりきらず、重なりやすくなります。 - 乳歯の早期喪失・虫歯などの影響
虫歯や衝撃などで乳歯を早く失ってしまうと、永久歯の正しい位置が確保できず、ズレて生えてしまうことがあります。 - 遺伝的な要因
叢生は遺伝の影響も受けやすく、親や兄弟に叢生がある場合、子どもも似た歯並びになる可能性があります。 - 舌や頬の癖、口呼吸などの日常的なクセ
長期間の指しゃぶり、舌で歯を押す癖、頬杖、口呼吸などの習慣も歯列に悪影響を与えることがあります。
これらの原因が複数重なっていることも多いため、「叢生かも?」と感じたら、歯科医院で正確な診断を受けることが大切です。
叢生の治療に迷ったら!治療するメリット・放置するデメリット

叢生の原因はわかったけど、「そこまでひどい歯並びじゃないし。」「治療するのに時間もお金もかかるしな。」と思うこともありますよね。
じつは叢生(そうせい)は見た目の問題だけでなく、口腔内の健康にも影響を及ぼします。
治療をすることでさまざまなメリットがありますが、反対に放置すると将来的なリスクが高まる可能性もあるでしょう。
治療するメリット | 放置するデメリット |
---|---|
歯磨きがしやすくなり、虫歯や歯周病の予防につながる 見た目の印象が良くなり、自信が持てるようになる 噛み合わせが整い、食事や発音がスムーズになる 顎への負担が減り、顎関節症の予防になる 将来の歯の寿命が伸びやすくなる | 歯と歯のすき間に汚れがたまりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まる 歯並びのコンプレックスから笑顔に自信が持てなくなることがある 噛み合わせの悪さから、咀嚼効率の低下や発音の不明瞭さにつながる 噛み合わせの不調から、顎が痛くなる、疲れやすくなることがある 歯に余計な力がかかり、歯のすり減りや抜歯リスクが高まる |
「見た目は気になるけど、治療するほどかな?」と迷っている方は、まずは歯科医院で相談し、自分の歯並びの状態やリスクをしっかり把握することが大切です。
叢生の矯正治療は、美しさだけでなく健康面でも多くのメリットがあります。
叢生の歯並びを矯正治療したい!どんな方法があるの?
叢生(そうせい)の歯並びは、見た目の改善だけでなく、かみ合わせや健康面にも関わるため、矯正治療を検討する価値があります。
ここでは、大人の叢生の治療に使われる代表的な矯正方法を紹介します。
ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は、もっとも一般的で確実性の高い歯列矯正の方法です。
ブラケットとワイヤーを使って、歯に継続的な力をかけて理想的な位置へと動かしていきます。
- メリット:幅広い症例に対応可能。歯の動きが精密にコントロールできる。
- デメリット:装置が目立ちやすく、食事や歯磨きにやや注意が必要。
※表側・裏側の選択肢があり、裏側は目立ちにくい反面、費用が高めです。
金属製のワイヤーを装着するため人目が気になる、また歯の表面に固定してあるため歯磨きがしにくく口腔内の清潔が保ちにくいなどのデメリットがあります。
歯科医院によってはホワイトワイヤーを使用したり、ワイヤーを歯の裏側に装着する裏側ワイヤー矯正などもあるため、比較的目立ちにくい方法でも治療が可能となってきています。

マウスピース矯正(インビザラインなど)

透明なマウスピース型の装置を使う矯正方法です。
目立ちにくく、取り外しができるため、見た目や日常生活への影響を抑えたい方に人気です。
- メリット:目立たず快適。取り外しできるため食事や歯磨きがしやすい。
- デメリット:歯の重なりが強い場合や、細かい調整が必要なケースでは適用が難しいことも。
※症例によっては、ワイヤー矯正との併用が提案される場合もあります。
ワイヤー矯正に比べて矯正力が弱く、軽度〜中等度の叢生治療が適応になることが多いです。
重度の場合、適応にならない可能性があるのでカウンセリングで医師へ相談してみましょう。

叢生の治療に抜歯は必要?

叢生では、歯が並ぶスペースが足りないことが多く、歯列矯正治療の一環として抜歯が必要になるケースがあります。
- 抜歯が必要な場合
歯の重なりが強く、非抜歯ではきれいに並ばないと判断される場合。 - 抜歯が不要な場合
スペースが比較的確保しやすい軽度の叢生や、子どもの矯正であごの成長を活かせる場合など。
抜歯の必要性は、歯列や顎の大きさ、かみ合わせのバランスなどを診断して判断されます。
不安な方は、矯正専門医の診察を受けてみましょう。

子どもの叢生は早めに矯正するとメリットが多い

子どもの叢生(そうせい)は、早い段階で気づいて治療を始めることで、大人よりもスムーズに改善できることがあります。
子どもの矯正治療開始のタイミングは2回あります。
- 混合歯列期(6歳〜)
永久歯が生え始める時期(治療におすすめの時期) - 永久歯列期(12歳以降)
永久歯が生えそろう時期(混合歯列期の治療の仕上げ)
特に成長期の子どもは、あごの骨がまだ柔らかく、発育を利用しながら歯列やかみ合わせを整えることができるため、矯正の効果が出やすいのが特長です。
マイオブレース、インビザラインファースト、ワイヤー矯正、顎顔面矯正などの選択肢があります。
子どものうちに叢生の治療を開始するにはいくつかのメリットがあります。
子どものうちに矯正を始めるメリット
- 顎の成長を利用して、歯が並ぶスペースを確保できる
- 将来的な抜歯のリスクを下げられる場合がある
- 永久歯が生え揃う前に正しい歯の誘導ができる
- かみ合わせのズレや顎のゆがみを早期に改善できる
- 見た目のコンプレックスを早いうちに解消できる
他にも先ほど説明した「虫歯などのリスクが軽減」「噛み合わせが良くなる」などのメリットもあげられます。
ただし、すべてのケースで早期治療が必要とは限りません。
永久歯がある程度生え揃ってから矯正を始めたほうがよい場合もあるため、お子さんのお口の状態を専門医に診てもらうことが大切です。
叢生(そうせい)に関するよくある質問(FAQ)

叢生の治療を検討するなかで、「抜歯は必要?」「子どもでも治せる?」「大人になってからでも間に合う?」など、さまざまな疑問や不安を抱える方は少なくありません。
ここでは、叢生に関してよく寄せられる質問に対して、わかりやすくお答えしていきます。治療に踏み出す前の参考にしてみてください。
まとめ:叢生矯正の第一歩は相談から!自分に合った治療を始めよう

叢生の原因は、歯のスペースが不足していることがほとんど。
叢生は見た目だけでなく、虫歯や歯周病、かみ合わせのトラブルなど、さまざまなリスクを招く可能性がある歯並びの乱れです。
原因や症状の程度によって治療法は異なりますが、早めに対処することで、より負担の少ない矯正が可能になるケースもあります。
「自分は叢生かどうか分からない」「治療するほどではないと思っている」
そんな方も、一度歯科医師に相談してみることをおすすめします。
まずは、今の状態を正しく知ることが、理想の歯並びへの第一歩です。